ありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒューズ、死んだんだってね」

 

 

仕事で西部に行っていたときに入ってきた凶報

『マース・ヒューズ中佐が亡くなられた』

なぜ私にそう伝えられたのか、それは多分、士官学校からの友人だったからだろう

それを聞いたとき、不思議と

『嘘だ』

とは思わなかったし、悲しいだとかそういう感情も湧きあがらなかった

ただ

『ああ・・・そうなんだ』

と、思った

 

もしかしたらそれはただ突然の事で頭が働かなくて

所謂、フリーズしていたのかもしれない

 

 

 

・・・帰ってきて一言目がそれか」

ロイが溜息を吐きながら言った

「殺されたの?」

何も感情無く言うとロイは、同じく感情の失った顔で言った

「ああ」

一言

「そっか」

 

それからは沈黙だった

ああ、何かロイに言われて初めて実感した気がする

ヒューズが死んだ

旧友だった

今でもすごく仲が良かった

本当に良い友達だった

 

「・・・普通さ、」

ポツリと零すとロイはこちらに顔を向ける

「普通、ここは友達として泣き崩れる場面だよね」

崩れることはなくても、少しは涙を流す場面だ

苦笑しながら言った

「でも何でだろうね、泣けない」

窓の外に視線を向けて、小さく言ってみる

こんなことロイに言ったってしょうがないのに

「信じられないわけじゃないんだけど」

それでも

「泣けない」

ポツリポツリと零しながら、

それでも自分の声が震えているのが分かる

それでも泣けないとは何事か

自分自身に苦笑が漏れる

 

両肩に温かな重みを感じた

「・・・、ヒューズに挨拶しに行くか?」

ロイの手の重みだった

「ううん、しない」

その手の重みはとても優しく感じた

「なぜだ?」

「泣いちゃうから、多分」

苦笑しながら言ってみた

多分、墓の前だと泣いてしまう

「土の下に友人が埋まってるなんて、そんな現場行ったら泣いちゃうよ、私」

両肩に乗っていたロイの手が腰に巻きついて

後ろから私を抱きしめる形になった

「多分だけどね」

、行こう。ヒューズに文句の一つでも言ってやれ」

多分、喜ぶから

そうロイは私の耳元で小さく言う

声が少し震えている気がした

「先に逝くなんてどういうつもりだ、の一言くらい掛けてやれ」

ロイの腕に力が入る

「・・・実際死んだ人間よりさ、置いてかれた人間のが寂しいのかもね」

腰に回っている腕に手を添える

「死んだ人間が一番可哀想だけど・・でも置いてかれるほうは辛いね」

「・・そうだな」

「ロイ、ごめん。やっぱり行けない。見たくない」

1人だと泣いてしまう

何をしでかすか分からない

多分、正気を失ってしまうから

「私も一緒に行く」

私の心を読み取ったかのようにロイは呟く

「だから行こう」

「・・・何でロイが一緒に行くの。行くんなら私、1人で行く」

「泣く時、一人だと虚しいだろう?」

 

 

 

 

 

翌日

ロイと一緒にヒューズへ会いに行った

墓石にはしっかりとその名が刻んである

小さな墓だった

あんなに優しくて出来すぎるほど出来た人間がこんな小さな墓でいいのか、

そんなことですら思ってしまった

墓の下に眠るのは私のかつての、否、唯一無二の友人

 

 

「泣かないのか?」

ロイが少し悪戯めいた声で言った

「実際、誰かが近くにいると泣けないものだね」

「・・我慢しなくていい」

「してないから。・・・大丈夫」

だって

隣りにはロイがいて、私の手を強く握っていてくれているから

隣りの存在がこんなにも大きく感じられたのは、久方振り

 

「・・・ヒューズ、ありがとう」

 

今まで本当にありがとう

笑わせてくれて、励ましてくれて、支えてくれて

本当にありがとう

 

 

「ロイも」

「ん?」

「ロイも。ありがとう」

 

隣りにいてくれて

あなたがいてくれたから私はこうして現実と向き合える

 

―――本当にありがとう

 

 

 

 

 

 

 

終われぃ

 

 

 

 

 

 

 

 

思いつきで書くのは本当に宜しくないことです;
というわけで言い訳はなしの方向で・・(え)

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