―――好きだ。付き合って欲しい。―――

 

決死の告白だったのに

 

 

 

 

 

 

本日、晴天なり

 

 

 

 

 

天気が良いある日のこと

昼を過ぎ、太陽は西へと向かっている

爽やかな風が吹く

 

木の下、木陰の中で、ハボックは煙草を口に咥え、空を見ていた

周りには、ブラックハヤテ号が無邪気に蝶を追い掛け回している

 

「いいよな・・・お前は悩みなんてなさそうでさ・・・」

 

ぽーっとしながら、やはりぽーっとした口調で言った

 

 

 

「どうしたんだ?ハボックの奴」

ブレダは窓の外を見やり、呆れた口調で言った

外にはぽーっとし煙草を咥えているハボックがやる気なさそうに空を見つめている

空、というより上の空といった感じだが

「また女にでも振られたんだろう」

ロイは新聞を捲り面倒臭そうに言った

「またですか・・・」

「ここまで女運のない奴もめずらしいというものだ。なぁ、少尉」

話を振られ、は肩をびくつかせた

「そ、そうですね」

「ん?どうした?」

「いえ、何でもないです」

動揺しているを、ロイは不思議そうに見やり、

外にいるハボックに目を向ける

「だが、これでは仕事に支障をきたすな・・・おい」

溜息がてらロイはそこにいた、ブレダ、フュリー、ファルマンに話し掛ける

「誰かハボックの女の好みを知ってる奴いるか」

「「「知りませんよ、そんなこと」」」

ロイの問いかけに三者同様の答えを返す部下

は、その様子を見、立ち上がった

「どうした?少尉」

「資料を探しに行って来ます」

言うが早いか、部屋から早足で出て行く

その様子を見てロイはなるほどと言った感じで頷いた

 

「ハボックの奴・・・また高嶺の花に目を付けたな」

 

ロイが呟いたそれに、3人の部下は

「?」

といった感じでロイを見た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・」

は溜息を吐いた

 

まさか本気だったとはね

 

そう思い、また溜息を吐く

確かにハボックの様子は変だった

数日前から

正確には―――自分がハボックを振ったときから―――

 

アレが本気だとは思わなかった

思えなかった

だって、あれは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4日ほど前、はハボックを連れ立って飲み屋に来ていた

二人共、相当酒が入り結構な具合に饒舌になっていた

 

そんな時に、あんな話を持ちかけた自分も悪かったかもしれないけど

 

「最近どうよ、ジャン」

「どうって何がだよ」

「女だよ、女。彼女とはヨロシクやってんの?」

は酒の入ったグラスを傾け、口に含みながら軽い調子で言う

「あ?彼女なんていねーって」

「あ、そうなん?花屋の彼女は?あーまた振られたんだ?」

「お前さ、もっと遠まわしな言い方できねーの?ストレートすぎ」

「あはは〜もしかしてまだ引きずってる?やぁね。男らしくない。未練タラタラ」

「別に引きずってなんかいねーよ」

ハボックもグラスを傾ける

「何で別れたの。あ、ゴメン。間違えた。何で振られたの?」

「だからストレートすぎだ、ボケ」

「で?何で??」

「はぁ・・・それは」

「それは?」

ハボックは俯き言い淀む

は興味深そうに顔を覗き込む

「・・・別にお前に関係ないだろ・・・」

「あー!逃げた!関係ないって言って逃げたな!男らしくないぞ!ハボック!!」

「だぁ!お前、酔ってるだろ!!飲みすぎなんじゃねぇの!?」

「私はまだまだイケルわよ〜」

「ホントかよ・・・」

「で?何で?」

「だから・・それは・・・」

 

目線を泳がして、ハボックはグラスを傾ける

グラスに残っている酒を一気に喉に通した

 

「分かった」

 

が呟いた

「分かったって、何が」

「アンタ、他に好きな人出来たんでしょ」

「ぶっ!?」

盛大に吹き出すハボック

酒を含んでいなくてよかった、

はそう思いながら、続ける

「好きな人出来たから振られたんしょ?」

「ちげぇ」

「あー図星ィ!図星だろ!この万年薄給軍人!」

「うるせぇよ!」

「やだやだ。図星差されたからって女性に怒鳴るなんて、酷いわ、ハボック少尉」

顔を手で覆い、泣く真似をする

それを見てハボックは呆れた口調で言った

「お前、やっぱ酔ってるだろ・・・」

「で?好きな人って誰よ?」

バッと顔を上げ、ハボックに詰め寄る

には関係ねぇだろ!」

「あ!認めた!他に好きな人いるって認めたね?」

「チッ・・・誘導尋問だ・・・!」

「まぁねん♪で?誰だれ?私の知ってる人?」

「だからお前には・・」

「関係あるよ!だって長い付き合いじゃん!」

 

ぐっとハボックの右手を、両手で握り締めは真面目な顔で言った

赤くなるハボックの顔

それは、酒のせいか、否か

 

「聞きたいかよ・・・」

「うん!」

 

「・・・お前だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・」

思い出してまた溜息が出る

 

―――俺はお前が好きなんだよ―――

 

言われて、一瞬呆けた

意味が分からなかった

大分入ったアルコールのお陰で、頭が回らなかった

 

―――好きだ。付き合って欲しい―――

 

続けて言われた言葉に、

は無理矢理笑って

 

―――冗談はやめてよね!!性質悪いよ、ジャン―――

 

軽く流したのだ

その後のことはあまり覚えてない

ただ、とても気まずくなって、早々に店を出たのを覚えている

そして翌日からハボックはああなってしまった

 

 

 

「だって・・・」

 

酔ったイキオイだと思うじゃん、普通

 

長い付き合いだったから、

まさかそういう対象で見られているとは思わなかった

士官学校からの付き合いだったから

 

成績も悪く、ギリギリでやばかったハボックの勉強を手伝ったのは自分だ

東部に配属されてからもずっと一緒で

一緒に中央までやってきた

ずっと一緒だった

 

自分はそういう対象で見ていなかった

ハボックもてっきり、自分を女だと思ってないと思っていた

 

 

 

 

「だって、なんだよ」

 

突然聞こえた声に驚き振り返るとそこには先ほどまでぽーっとしていたハボックの姿があった

「ジャン。何やってんの」

努めて、平静を装って応答する

突然の登場に、内心はドキドキだ

 

「何って・・・返事、貰いに来た」

「返事って?」

「とぼけんな」

 

真面目なハボックが近づいてくる

は反射的に後ろに歩を進める

 

「逃げるな」

 

何時の間にか、の後ろには背よりも高い本棚

そこに近づくハボック

 

「待って、ジャン」

「逃げるなよ、

 

そっと、の体の横に腕を付くハボック

―――逃げられない―――

 

「頼むから」

 

それは、何かに縋る表情

ハボックは、ほとほと泣きそうな顔をしていた

 

「あの時、お前が戸惑うのを承知で言ったんだ。俺も実際戸惑ってる」

 

今まで女友達だとばかり思っていた

ずっと一緒だったから

そういう対象には絶対ならないと思ってたのに

 

「いつの間にか、無意識にお前を目で追ってることに気付いた」

 

だから、前の彼女とは別れた

肩頬に平手を喰らったけど

でもそうせざるを得なかった

気持ちに気付いてしまったら、もう他の女のことなんて考えれなくなってしまったから

 

だから想いを告げた

決死の告白だった

ずっと続いてきた、

この友達以上で、恋人未満な微妙な仲が壊れるのを覚悟で告げた

でも

やはり怖かった

 

「お前と気まずくなんてなりたくねぇんだよ」

 

好きだから

どうしても手に入れたいから

今まで以上に、想いが強いから

 

「俺はお前が好きだ、

 

ハボックの悲痛なほどともいえる告白に

は、

 

「ジャン・ハボック少尉」

 

名を呼び、

首に腕を巻きつけた

 

ハボックが、半ば掠れた声で、彼女の名を口にする

 

それは自然な動きだった

シナリオどおり、かのように

二人の顔は、自然と、互いに近づいていった

 

 

 

 

 

「・・・なんてね」

 

 

ゴツ

 

 

「いって!」

顔が近づいて、目を瞑ったその時、

はイキオイよくハボックの額に自分の頭部を打ち付けた

 

「このままキスさせてもらえると思うなよ、ハボック少尉」

「お前なぁ・・・!!」

人に期待を持たせておいて・・・!

 

「仕事中に不謹慎な行動は慎むように、ハボック少尉」

「・・・りょーかい。少尉」

 

は何もなかったかのように、

資料を集め扉へと歩を進める

 

―――結局、俺は振られたのか―――

 

溜息を吐き、そう思いつつもなぜか笑みがこぼれる

振られようが、なんだろうが、彼女は以前と同じように接してくれる

それが嬉しかった

 

ふと、扉の前では立ち止り振り返る

忘れていた事項を、軽く口にするかのように

本当に軽い口調だった

 

「ハボック少尉、言っとくけど。私、相当固い女だから。覚悟しといて」

 

 

それだけ残して、彼女は去った

 

 

「・・・ってことは・・両想い・・・?」

 

 

ハボックは、微妙なその返事に首を傾げつつ、

笑みを零した

 

窓から外を見ると太陽が燦々と地上を照らしている

ハボックの心の中は、その照らされる大地の如く、晴れ晴れとしていた

本日、晴天なり

 

 

 

ごめんなさい。
長くてごめんなさい。
色んな意味でごめんなさい。ヒィィ!!
でも言い訳はしませんよ(え)

ブラウザバックプリーズ

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