その背中に追いつきたいと思った

 

 

 

 

 

 

目で追う背中

 

 

 

 

 

 

――長州藩士がとある宿に潜伏し、善からぬことを企んでいる――

 

情報が入ったのは三日ほど前

監察方の山崎が偵察にいき、発覚した事実だった

 

 

 

死番で

我が二番隊が選ばれた

 

 

 

「っ・・・!」

腕から血が溢れた

刀で斬り付けられたのだから当たり前だ

やられたのは利き腕

上腕から大きく描かれた切傷が、眼に映る

―――刀が握れない―――

力が入らない

目の前にいる、不逞浪士が、大きく刀を振り上げた

「!」

―――殺られる―――

瞬時に思い、目を瞑った

 

その時、脳裏を過ぎったのはあの後姿

小さい癖に意外としっかりした背中

いつもいつも無意識のうちに目で追っていた背中

追いつきたい、とさえ思ったその小さく、大きな背中

 

「永倉隊長・・・」

 

声に出さず、口にした名

結局彼には追いつくどころか足元に及ぶことさえ出来なかった

 

「?」

 

いつまで経っても降って来ない衝撃に不思議に思い目をそっと開ける

ザンっ

というモノを斬る音とともに、

目に入ったのはいつも目で追っていた背中

「永倉たい・・・」

「大丈夫?」

彼は振り向きざまに言った

「ありがとうございます、隊長」

勢いよく立ち上がる

自分とそう変わらない身長の彼だが、とても逞しく大きく見えた

 

彼は一瞬、顔を歪めた

「腕、やられてるネ」

「す、すみません!これは私の不注意で・・・」

言い終わる前に、彼は何処からか布を取り出す

私に、そこに座るよう、合図すると彼も自らそこへ座る

傷を負った腕を優しく掴み、傷に布をきつく縛る

その痛みに、一瞬視界が歪む

「っ・・」

「我慢して」

止血を終えると、彼は、伏せていた視線を私に合わせる

「・・・あのさ」

「隊長、私はもう大丈夫です・・・隊長は他へ行ってください」

――彼に追いつけないなら、せめて、足手まといになりたくない――

これ以上、世話を焼かせるわけにも行かない

彼の言葉を遮ってそう言うと、彼は眉間に皺を寄せる

立ち上がりそのまま無言で私の、傷のない腕を引いた

「いっ・・!」

ずんずんと歩いていく隊長

私は、隊長を怒らせてしまったのだろうか

彼のその様子に不安が頭を過ぎる

 

そのまま腕を引かれ宿を出る

どうやら他はもう片付いていたらしい

彼は、屯所とは違う方向へ足を進める

「永倉隊長。どちらへ?」

「・・・」

彼は何も言わない

仕方なく黙って付いて行くことにした

 

腕を引かれて、ぼおっと、その背中を見た

いつも遠目で追っていた背中がすぐ目の前にある

小さくて、タヌキみたいだ、とからかわれる隊長だが

それでもこうして隊服を纏い、帯刀する姿はかっこいい

いつか、この後姿を見て、彼に追いつきたいと思った

 

「あのね、ちゃん」

ふと足を止め、彼は言った

目の前には、憧れの背中

彼は振り向かない

「なんでしょうか」

「君は、女の子なんだから」

溜息を吐きながら、静かに言った

「それは・・・私が隊にいては邪魔だと言うことでしょうか・・・」

女の私が、一人前に剣を振るっても、男には敵わない

こうして出動した時に真っ先に狙われるのも、傷を負うのもいつも自分だ

隊長はそれを・・・

「俺はさ、別に迷惑だとか、足手まといだとかそんなことは思ってないヨ」

私の思考を遮って彼は言った

 

掴まれた腕が熱い

目が熱い

視界が歪む

 

「す、みませっ・・・私、い、つも・・・隊長に、追いつき、たくて・・稽古しっ・・てるのにっ・・・!」

それでも追いつけない、それでも迷惑をかける、いつもやられてしまう

自分の思いがどんどん溢れてきて、

それを表すように、涙が溢れる

「強くなりたいっ・・!隊長に・・迷惑、かけない、くらっ・・あなたっ、に・・追いつきた・・い!!」

 

 

 

彼女は嗚咽交じりに静かに言った

声を押えて言っているのに、

俺には悲痛な叫びに聞こえた

 

「追いつかれたら困るよ」

 

自然、

振り向き、彼女の腕をこちらへ寄せる

傷付いた腕を庇いながら、彼女の頭を胸元へ押し付けた

背は大して変わらないのに、細くて小さな体

 

ちゃんは女の子なんだから」

 

もし追いつかれたら

俺が彼女を護れなくなるだろ?

 

「そのままでいい」

 

――俺がずっと側にいて、君を護ってあげるから――

 

 

静かに言うと、彼女は俺の服を掴み、静かに涙を流した

 

追いつかれたら、俺が困る

君はそのままでいい

ずっと俺の隊で、俺の側で、俺を見てくれればそれでいいから

窮地の時は俺が駆けつけて命を賭けてでも護るから

だから

 

「そのままでいてよ」

 

 

隊長は静かに言った

私は彼の小さく、それでも大きな胸にしがみついて泣いた

 

 

 

 

 

「でもやっぱり強くなりたいです」

「何で!?俺が護ってあげるって言ってるのに」

屯所への帰り道、暗い道を並んで歩く

私がそう言うと彼は声を上げた

「だって、護られてばかりなんて嫌ですから」

「はぁ・・・さすが、女ながらにして新撰組隊士だよ・・・」

苦笑しながら彼は言う

「あなたが窮地に陥った時、護れずとも、あなたと共に窮地に立ちたいから」

「・・・・」

「一人でダメでも二人なら、切り抜けられる」

そのために、強くなりたい

そう言うと彼は私の手を握り締めて、空いた手で鼻を擦り

「アリガト」

小さく言って笑った

 

 

 

追いつけなくても、それでも

あなたのその背中を見て、私は強くなれる気がする

ずっとずっと目で追っていた背中

それが今は近くにある

これから、もっともっと近付けるように

あなたに追いつけるように

これからも、その背中を追う

 

 

 

 

 

 

ごめんなさい。
自分に拍手を送りたい。よくもまぁ、こんな意味不明な話を書けたもんだ(ある意味すげぇよ)
とりあえず、シリアスが書きたかったんですが、あえなく撃沈☆
やっぱりダメだ。イチャラブ大好き人間だもん私。脳内常時イチャイチャパラダイスだもん。

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