入学してから卒業するまでずっと窓際の席だった

それと同じくして隣りにはいつも同じ人がいた

 

 

 

 

 

隣りの彼女

 

 

 

 

 

授業はつまらなかった

別に、何でそんなことを学ばなきゃいけないのか

戦闘訓練とかそういうのだけでいいと思った

士官学校だし

将来軍人予定だし

数学とか、外国語とか、やる必要は全くないと思っていた

 

だからいつも授業は寝ていた

寝てても別に問題はないし

教師受けが悪くなるだけだし

勉強なんてテストの前に自分でできるし

くだらない授業を必死で聞く気にはなれなかった

 

いつも寝るときは窓の方に顔を向けて寝ていた

窓から見える校庭や、雲や空が何だかすごく好きだった

別にロマンチストとかそんなんじゃないし、ありふれた風景を見て嘆息の言葉なんて出てこないし

だけどここから、この角度で見る風景がなんだか無償に好きだった気がする

 

そして授業中、薄っすらと眼を開けると窓には教室内が薄っすらと映った

隣りの彼女が映っていた

ずっと、入学から卒業までその風景を見ていた

いや、風景とは言わないか。

でも外の風景と、窓に映る彼女と、

それを見るとなんだか安心して

それを見ることが当たり前で

日課になっていたような気がする

 

 

 

 

 

「ハボック。起きなよ」

突然、体が揺れた

そして上から降ってくる女の声

「んー・・・?」

「起きなって」

眼を薄っすらと開け、顔を窓から教室内に移し、目線を上げると隣りの席のがいた

「・・・か・・・」

んー・・・

伸びをする

体が痛い

机で寝ていたから当たり前だ、そんなことは俺でもわかっている

ふわぁ・・・

欠伸が出る

寝起きだから仕方ない

「何?」

俺は眼を擦りながらを見、言う

するとは淡々とした口調で言った

「ホームルームとっくに終わってる。帰んないの?」

「とっくに、って・・・」

もう以外の人は教室にはいなかった

外も少し暗い

「お前、今までずっと教室にいたのか?」

何で皆帰ったのにこいつだけ残っているのか、そう思って聞いた

「今日日直だから。日誌、書いてたの。そろそろ窓閉めて電気消したいんだけど」

なるほど

「あー・・・そう。わかった。帰るわ」

それから少し、彼女と言葉を交わし

まぁ共通の目的、とは言わないが行く用もあったので一緒に職員室へ行った

職員室へ行くまでの廊下で会話は少なかった

薄暗い廊下で正直気味が悪い

だけどなぜか居心地が良かった

そんな時、が口を開いた

「会話、ないね」

「ねぇな」

会話がないんじゃなくて話題がない、そう言ったほうが正しいかも

仲良いわけじゃないし、だからの趣味とか全然知らないから話ようもないし

でもこの沈黙もなぜか心地よかった

 

ひょんなことからと一緒に帰ることになった

『外は暗いから送っていけ』

担任の一言だった

別に急ぎの用があるわけじゃねぇし、と思って俺はそれを引き受ける

 

薄暗い家路でも会話はなくて

傍から観れば気まずい雰囲気なんだろうな、なんて他人事に思ってみたりした

それでも別に気にはならない

俺としてはなぜか居心地が良いから

 

陽が傾くのも早くなって

そうなるともう卒業の季節に差し掛かって

そういえば俺、最高学年だったな・・・

「もうすぐ卒業だな」

「そうだね」

なんとなく思ったことを口にしたら返答が返ってきた

したら今度はが口を開いた

「思えば私達、ずっと隣りだったね」

「・・・そういえばそうだな」

よく考えてみたらはずっと隣りにいた

だからか、隣りにいるのが当たり前のことになってて

だから一緒にいても居心地悪くないのか、そう思った

本当にずっと隣りにいた気がする

「弁当食うときも」

また思ったことを口にする

「授業中も」

も続けた

「放下も」

「ホームルームも」

 

なんだろうな、この感じは

 

「でも全然喋ってないね。私達」

「そうだな」

「ね」

「ああ」

 

一緒に居て、なぜか安心する

 

って、口数少ないよな」

「ハボックもね」

「そうだな」

「うん」

 

最もなことを言われた

お互い、口数が少ないから隣りにいても負担にはならなかったのかもしれない

元々、誰かとはしゃいで喋るの苦手なほうだし

 

「あ、私。ここ曲がってすぐだから」

歩き続けて、が突然言う

「そうか」

俺は別段驚きもせず、

その台詞の裏に『もうここまででいい』という意味が込められていることを察した

「わざわざありがと」

「別に」

「じゃあね」

「じゃあな」

 

とこんなに話したのはもしかしたら初めてかもしれなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

卒業して俺の隣りは空いた

がいなくなった

は南方司令部へ配属された

 

不思議な気持ちだった

落ち着かなかった

なぜか心に隙間が出来たような、風がひゅーっと入ってくるような

そんな感じだった

 

いつしかの隣りにいることが当たり前になっていたから

だからもしかしたら彼女は俺にとっての"酸素的存在"だったのかもしれない

 

その"酸素"が俺の隣りから消えた

 

 

 

 

 

 

 

東部で彼女も出来た

だけど心の隙間は埋めることができなかった

どんなに楽しいと思っても、いつもなぜか思い出すのは隣りで授業を真面目に受ける彼女

 

 

 

そして俺は上司に付いてセントラルへ移動になった

彼女にふられても、それは変わることがなかった

いや、彼女が出来たときにその隙間を埋めることが出来なかったんだから

彼女がいなくなってもその気持ちが変わることなんてない、それは普通に考えて当たり前のことだけど

 

 

 

 

中央司令部に移動して、何に驚いたかって

卒業後、南方司令部に配属されたはずのがいたことだ

彼女もまた俺を見て驚いていた

 

そしてどういう奇跡か運命か、ただの偶然か

俺の隣りにまた彼女が戻ってきた

 

「ハボック少尉、また隣りだね」

「ああ、そうだな。少尉」

 

俺の心の隙間が埋められた気がした

はやっぱり俺の"酸素的存在"だった

 

 

 

終われぃ

 

 

 

 

 

言い訳はしませんぞ(オイ)

 

 

ブラウザバック推奨

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送